楽天の新規向けクーポンで通常日の売上が約3.8倍|転換率も改善した検証事例
楽天市場で新規向けクーポンを発行しても、売上が伸びたのはクーポンのおかげなのか、イベントによる自然増なのか判断できない。そんな悩みは珍しくありません。今回検証した店舗では、自然変動を差し引いた純効果として転換率が約1.2ポイント改善し、日平均売上は約3.8倍相当まで押し上がりました。伸びの源泉はアクセス増ではなく、もともと購入を検討していた新規層が購入まで進んだこと、つまり転換率と新規購入者数の改善です。
この記事は、これまでの支援実績が1,000社以上、広告運用実績年間10億円以上の弊社(Proteinum)が、楽天市場の新規向けクーポンの効果と、その効果を正しく測るための検証設計について解説します。
ただし対象は健康食品・サプリメント・化粧品などを取り扱うジャンルの小規模店舗で、比較期間も各10日前後と短く、注文件数の母数も限られます。数字の大きさそのものよりも、「どう比べれば施策の効果が見えるのか」という考え方を持ち帰っていただける内容です。
この記事でわかること
- 新規向けクーポンが転換率・売上・新規獲得にどの程度影響したか(自然変動を除いた純効果ベース)
- アクセスが約3割減っても売上が伸びた仕組みと、その解釈
- お買い物マラソンや「5と0のつく日」などイベント日の変動率と比べたときの位置づけ
- 施策の効果と自然変動を切り分けるDID(差分の差分法)の考え方
- 自店舗でクーポン施策を続けるかどうかを判断する3つの基準
この記事の想定読者
- 楽天市場でクーポンを発行しているが、効果を測りきれていない方
- 新規顧客が増えず、通常日の売上が頭打ちになっている方
- 施策の優先順位を、感覚ではなくデータで判断したい方
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株式会社Proteinum 代表取締役
プロテーナムでは、楽天、amazon、自社EC、Yahoo!ショッピングを中心に、データに基づく圧倒的な成果にこだわった支援を行っている。ナショナルブランドを中心に累計1,000社以上の支援と年間広告費10億円以上の運用実績を持ち、独自のEC運用支援システム「ECPRO」も提供している。
クーポンを出しても「効いたかどうか」が分からないのはなぜか
効果が分からない原因は、施策そのものよりも比較の設計にあります。前月と当月の売上をそのまま並べると、クーポンの効果とイベント・季節による変動が同じ数字の中に混ざってしまうためです。ここを分けないまま評価すると、効いていない施策を続けたり、効いた施策をやめてしまったりします。
売上が伸びても、施策の効果と自然増が切り分けられていない
「クーポンを出した月は売上が伸びた」という事実だけでは、施策が効いたとは言えません。楽天市場では月ごとにイベントの構成や開催日数が変わるため、店舗側が何もしなくても売上は動きます。
実際に今回の検証店舗でも、クーポンを出していない通常日どうしを前月と比べただけで、日平均売上は伸びていました。この分は施策とは無関係な自然変動です。差し引かずに評価すれば、クーポンの効果を過大に見積もることになります。
通常日とイベント日を混ぜて平均すると、効果は見えなくなる
もう一つの落とし穴は、月全体の平均で判断してしまうことです。お買い物マラソンや「5と0のつく日」は1日あたりの売上規模が通常日と大きく異なるため、月平均に混ぜると通常日の小さな変化は埋もれます。
クーポンの効果を見たいときは、条件のそろった「通常日どうし」で比べるのが基本です。今回の検証も、イベントが重なっていない通常日を軸に組み立てています。
前提知識:楽天市場のクーポンの種類と、効果を測るための考え方
検証の内容に入る前に、楽天市場で使えるクーポンの種類と、効果測定の枠組みを整理します。どのクーポンを使うかによって費用の発生の仕方が変わり、見るべき指標も変わってきます。
楽天市場で発行できるクーポンの主な種類
楽天市場のクーポンは、大きく4種類に整理できます。新規向けの施策で使われるのは、主に配布型クーポンとクーポンアドバンス広告です。
- 配布型クーポン:店舗が任意に発行するクーポンです。RMSで割引額・割引率・利用条件・有効期限・対象商品などを設定でき、公開可否や1ユーザーあたりの利用回数条件も指定できます。限定的に配りたい場合は非公開設定にし、クーポン獲得URLを配布する運用になります
- サンキュークーポン:注文完了時に自動で付与されるクーポンです。2回目購入の促進に向いています
- サービスクーポン:楽天が費用を負担するクーポンです。RMSから申し込むことで対象店舗となり、値引き分は後日楽天から入金されます
- クーポンアドバンス広告:自社商品に興味を持ちそうなユーザーにクーポンを表示する運用型広告です。費用はクーポン獲得費用とクーポン割引費用の2種類に分かれます
いずれも2026年9月時点の仕様です。条件は変更される場合があるため、実施前にRMSの店舗運営Naviで最新情報をご確認ください。広告メニューとしてのクーポン活用はクーポンアドバンス広告の仕組みと運用のコツで詳しく解説しています。
新規向けクーポンで見るべき指標は「転換率」と「新規購入者数」
新規向けクーポンの評価軸は、アクセス数ではなく転換率と新規購入者数です。クーポンは基本的に、すでに店舗や商品ページに来ているユーザーの購入を後押しする施策だからです。
あわせて確認したいのが、新規比率とリピート購入者数です。新規が増えていても、既存顧客に値引きが流出していれば粗利は削られます。逆に、新規比率が下がっているのに売上が伸びている場合は、既存顧客の駆け込み購入で数字が作られている可能性があります。
自然変動を差し引く「DID(差分の差分法)」という考え方
DID(差分の差分法)は、施策を実施したグループと実施していないグループの「変化の差」を比べることで、自然変動を除いた純効果を推定する方法です。
必要なデータは3つです。
- ベースライン:前月の通常日
- 対照群:当月の、クーポンを出していない通常日
- 処置群:当月の、クーポンを実施した日
対照群の変化を「施策がなくても起きた自然変動」とみなし、処置群の変化から差し引きます。残った分が施策の純効果です。学術的に厳密な因果推論には満たすべき条件がありますが、店舗運営の意思決定には十分に使える枠組みです。
検証事例:新規向けクーポンを実施して何が起きたか

結論から言うと、自然変動を差し引いた純効果でも、転換率・売上・新規獲得のすべてが改善しました。一方でアクセス人数は減っており、伸びの源泉が集客ではないことが数字に表れています。ここでは検証条件まで含めて開示します。
検証前の状況と課題
対象は、健康食品・サプリメント・化粧品などを取り扱うジャンルの小規模店舗です。課題は売上の偏りでした。イベント日にはある程度売上が立つ一方で、通常日はほとんど動かない状態が続いていました。
新規顧客の獲得もイベント頼みで、通常日の転換率は低い水準にとどまっていました。イベント以外の日に売上を作る手段を持てるかどうかが論点でした。
実施した施策
実施したのは、新規ユーザーを対象としたクーポンの発行です。イベントが重なっていない通常日を含む1週間弱の期間に限定して発行しました。
なお、割引率と配布手段は非開示のため本記事では触れません。検証の焦点は、「新規限定」という条件で値引きを提示したときに、通常日の指標がどう動くかにあります。
検証条件(比較期間・比較対象・母数)
今回の検証条件は次のとおりです。事例の数字を自店舗に当てはめる前に、条件の近さを確認してください。
- 比較期間:夏季の連続する2か月
- ベースライン:前月の通常日(10日前後)
- 対照群:当月の、クーポンを実施していない通常日(10日前後)
- 処置群:当月のクーポン実施日(1週間弱)
- 比較指標:日平均売上、日平均売上件数、日平均アクセス人数、転換率、客単価、日平均新規購入者数、日平均リピート購入者数、新規比率
- 母数:通常日は注文が入らない日もある規模で、クーポン実施日でも1日あたり数件程度
母数が小さいため、倍率は大きく振れやすい点に注意が必要です。確定的な効果ではなく、傾向として捉えてください。また、クーポンの割引原価や広告費は含めていないため、粗利への影響は本検証の範囲外です。
結果と解釈
純効果ベース(処置群の変化から対照群の変化を差し引いた値)の指標変化は、以下のとおりです。
| 指標 | 変化(純効果ベース) |
|---|---|
| 日平均売上 | 約3.8倍相当の押し上げ |
| 日平均売上件数 | 約4.6倍 |
| 転換率 | 約1.2ポイント改善 |
| 日平均アクセス人数 | 約3割減 |
| 日平均新規購入者数 | 約4.4倍 |
| 日平均リピート購入者数 | 約5倍 |
| 新規比率 | 約3.5ポイント上昇 |
| 客単価 | 微増 |
読み取れるのは、売上件数と転換率が同時に伸び、アクセス人数だけが逆方向に動いているという構図です。集客が増えたわけではなく、すでに来ていたユーザーの購入率が上がったと考えるのが自然な解釈になります。
期間の合計でも、クーポン実施日は通常日より日数が少ないにもかかわらず、売上は約1.9倍でした。少ない日数で通常日の期間合計を上回っており、通常日の売上の薄さを埋める手段として機能したと言えます。
客単価については解釈に注意が必要です。前月の通常日と比べると約2割低下していますが、当月の通常日と比べると上昇しており、自然変動を差し引くと微増になります。値引きによる単価の目減りは今回は限定的でしたが、客単価は購入商品の構成で振れるため、この点は断定できません。
イベント日と比べて、新規向けクーポンはどのくらい効いたのか
売上と売上件数の伸び幅では、新規向けクーポンの実施日がイベント日を上回りました。ただし、すべての指標でイベント日を上回ったわけではありません。ここを正確に押さえておかないと、施策の優先順位を誤ります。
イベント日の変動率との比較
同じ2か月間で、イベント区分ごとに日平均売上の変化を比べた結果は次のとおりです。いずれも前月の同じ区分との比較です。
| 区分 | 日平均売上の変化 |
|---|---|
| お買い物マラソン+「5と0のつく日」 | 約1.4倍 |
| お買い物マラソン期間中の通常日 | 約1.6倍 |
| 「5と0のつく日」+ワンダフルデー+ご愛顧感謝デー | 約2.7倍 |
| 新規向けクーポン実施日 | 約4倍 |
一方、転換率の改善幅ではイベントが重なった日が最も大きく、約4.9ポイント改善しています。新規購入者数の伸びも、クーポン実施日とほぼ同水準でした。つまりクーポンのほうがイベントより優れているという結論ではありません。ポイント倍率が重なる日はもともとユーザーの購買意欲が高く、そこに売上が集中するのは当然の動きです。
今回言えるのは、イベント日以外の通常日でも、イベント日に匹敵する伸びを作れる余地があったという点です。イベント間の谷を埋める施策として位置づけるのが実務的です。各イベントの特性は「5と0のつく日」と他キャンペーンの違いで整理しています。
アクセスが約3割減っても売上が伸びた理由
アクセスと売上が逆方向に動いたのは、クーポンが集客ではなく転換の施策として働いたためと考えられます。考えられる理由は3つあります。
- クーポンの獲得や利用は、すでに購入を検討している段階の行動です。買う意図のあるユーザーの背中が押された可能性が高いです
- アクセスの減少は、イベント構成やモール全体の流入変化といった外部要因によるものと見られます。クーポンを出したことで流入が減る理由は考えにくいためです
- 新規比率が上昇しているため、押し上げの中心は既存顧客の駆け込みではなく新規層だったと考えられます
いずれも相関にとどまる解釈であり、因果を断定できるものではありません。ただ、アクセスが減っている局面でも売上を作れる手段があるという事実は、実務上の意味が大きい発見です。
この事例から言える新規向けクーポンの判断基準

この検証から持ち帰れるのは、個別の数字ではなく評価の枠組みです。自店舗でクーポンを続けるか、やめるか、条件を変えるかを判断するための基準を3つに整理します。
判断基準1:クーポンは集客施策ではなく転換施策として評価する
クーポンの成否は、アクセス数ではなく転換率と売上件数で判断してください。今回のようにアクセスが減っていても、転換率と件数が伸びていれば施策としては機能しています。
逆に、アクセスが増えているのに転換率が動いていない場合、伸びの要因はクーポンではなくイベントや広告である可能性が高くなります。指標を混ぜずに、どこが動いたのかを分けて見ることが出発点です。
判断基準2:効果検証は「通常日どうし」で比較する
比較の単位を「通常日どうし」にそろえるだけで、検証の精度は大きく変わります。イベント日を含めた月平均では、施策の効果が自然変動に飲み込まれてしまいます。
可能であれば、同月内にクーポンを出す日と出さない日の両方を確保してください。同月内に対照群を作れれば、季節要因や商品構成の変化を受けにくくなります。RMSでの実務的な進め方はRMSのデータ分析で改善点を特定する方法を参考にしてください。
判断基準3:新規比率とリピート購入者数を同時に見る
新規向けクーポンの評価では、新規購入者数だけでなく新規比率とリピート購入者数もセットで確認します。新規比率が上がっていれば、値引きが狙いどおり新規層に届いたと判断できます。
今回はリピート購入者数も伸びていました。新規限定の設計であっても、店舗全体の露出が増えることで既存顧客の購入が動くことがあるため、値引き対象外の顧客の動きも合わせて見ておくと判断を誤りにくくなります。検証の設計から一緒に組み立てたい場合は、楽天市場のコンサルティング・運営代行サービスもご覧ください。
よくある失敗パターンと注意点
最後に、クーポンの効果検証でつまずきやすい2つのパターンを挙げます。どちらも施策の良し悪しではなく、評価の仕方に原因があります。
イベント日と重ねて発行し、効果が測れなくなる
売上を最大化したい場面ではイベント日にクーポンを重ねるのが定石ですが、検証を目的とするなら逆効果です。ポイント倍率やモール全体の販促と効果が混ざり、クーポン単体の寄与が分離できなくなります。
検証したい期間は、あえてイベントが重なっていない通常日を選んでください。配信タイミングで成果がどれだけ変わるかは配信タイミング別にROASのばらつきを検証した事例でも確認できます。
割引原価を含めずに「成功」と判断してしまう
売上と転換率が伸びても、割引原価を含めた利益で見ると成立していないケースがあります。今回の検証も粗利への影響は範囲外であり、この点は評価が完了していません。
クーポンを継続するかどうかは、売上・転換率に加えて、クーポン利用率と割引原価を合わせた粗利影響まで確認してから判断してください。売上が伸びた施策ほど、原価の確認が後回しになりがちです。
新規向けクーポンに関するよくある質問
新規向けクーポンの検証について、店舗の運営担当者からよくいただく質問をまとめました。再現性や検証期間の考え方についても、今回の条件を前提にお答えします。
Q. 新規向けクーポンは、通常日に出しても効果がありますか?
今回の検証では、通常日でも転換率と売上の改善が確認できました。イベント日と比べても売上の伸び幅は同等以上でした。ただし小規模店舗の限定的な検証であり、すべての店舗で同じ結果になるとは限りません。
Q. 同じ施策をうちの店舗でやれば同じ結果になりますか?
同じ結果になるとは言えません。今回の検証は注文件数の母数が小さく、比較期間も各10日前後と短いため、倍率が大きく出やすい条件でした。ジャンル・単価帯・レビュー数・広告の配信状況によっても効果は変わります。まずは自店舗で通常日どうしを比べる小さな検証から始め、判断材料を自店舗のデータで作ることをおすすめします。
Q. クーポンを出すとアクセスは増えますか?
クーポン単体でアクセスが増えるとは考えないほうが安全です。今回の検証でも、クーポン実施日のアクセス人数は通常日より減っていました。アクセスを増やしたい場合は広告や検索対策と組み合わせ、クーポンは転換を高める役割として設計してください。
Q. 新規向けクーポンとイベント時のクーポンは、どちらを優先すべきですか?
目的が違うため、どちらかを選ぶ関係ではありません。イベント日のクーポンは集中する需要を取り込むため、新規向けクーポンはイベント間の通常日を埋めるために使うのが基本の考え方です。予算が限られる場合は、まず売上が集中するイベント日を押さえるのが優先になります。
Q. クーポンの効果検証は、どの期間を比べればいいですか?
前月と当月をそのまま比べるのではなく、同月内の通常日を対照群として置き、前月の通常日をベースラインにする形が実務的です。この3つがそろえば、自然変動を差し引いた純効果を確認できます。期間の長さより、比較対象の条件がそろっているかを優先してください。
まとめ
今回の検証で確認できた要点を整理します。
- 新規向けクーポンの純効果として、転換率は約1.2ポイント改善し、日平均売上は約3.8倍相当まで押し上がった
- アクセス人数は約3割減っており、伸びの源泉は集客ではなく転換率と新規購入者数の改善だった
- 売上の伸び幅ではイベント日を上回った一方、転換率の改善幅ではイベントが重なった日のほうが大きく、クーポンがイベントに勝るという結論ではない
- 母数が小さく期間も短いため、確定的な効果ではなく傾向として扱う必要がある。粗利への影響は検証範囲外である
次に取るべき最初の一歩は、自店舗のRMSデータから「イベントが重なっていない通常日」だけを抜き出し、前月と当月で比較できる状態を作ることです。
「クーポンを出しているが効果が測れていない」「新規顧客が増えず売上が頭打ちになっている」「何から改善すればいいか分からない」「やりたいことはあるが手が回らず困っている」
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