EC事業における事業計画の策定方法について
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楽天、Amazon、Yahoo!ショッピングの大手ECモールや自社サイトのご支援実績のもと、EC売上向上のノウハウをお届けします。
近年、社会の変化や技術の進化により、オンラインでの買い物が私たちの生活に深く根付いてきました。特に、新型コロナウイルスの影響やスマートフォンの普及は、EC市場の拡大を後押しする大きな要因となっています。
このような時代の流れの中で、自社ブランドや商品の販売チャネルとしてECサイトの開設を考える企業や個人事業主が増えてきました。とはいえ、EC事業を成功させるためには、事前の計画づくりが不可欠です。
本記事では、ECサイトを運営するうえで重要となる「事業計画」の立て方について解説していきます。
Contents
EC事業における事業計画の考え方
企業が新たなビジネスに取り組む際、多くの場合は綿密な事業計画の策定が前提となります。扱う商品、ターゲット市場の規模、競合他社の販売手法、そして収益化までの期間など、事前に検討すべき事項は多岐にわたります。こうした準備が、事業の安定した立ち上げと長期的な成長の鍵となるのです。
では、EC事業においても同様の計画が必要でしょうか?
もちろん、ECを本業として展開している企業では、市場分析や収支見積もりといった基本的な計画策定は行われていることが一般的です。しかし、注意が必要なのは「本業ではないがECを取り入れたい」と考える企業のケースです。
たとえば、これまで製造業に特化していた企業が、新たな販路拡大策としてECに参入する状況を想定してみましょう。
- 自社の製品を、とりあえずコストのかからない自社ECサイトで販売開始
- 思ったように集客できず、次に楽天市場やYahoo!ショッピングにも出店
- 売上はわずかに伸びたが、手数料や運用コストが想定以上にかさみ、利益が確保できない
このような課題に直面する企業は決して少なくありません。製造業に限らず、卸売や小売などでも、ECを「既存の延長」として捉えてしまうと、EC独自の運用ノウハウに対応しきれず、想定外の出費や戦略の不一致により成果が上がらないケースが多く見受けられます。
そこで必要になるのが、「EC特化型の事業計画」です。
- 自社商品を最も効果的に届けられる販路はどこか?(自社サイト、楽天、Amazonなど)
- EC運営で特に注意すべき費用項目は何か?
- 効果的に売上・利益を上げるための具体的な施策とは?
- 実施した施策の成果をどう測定し、次のアクションにどう活かすか?
これらは一例に過ぎませんが、ECにはECならではの検討事項や分析視点が存在します。これらを十分に考慮したうえで、実現性の高い計画を立てることが、失敗を回避し、継続的な成果を上げるために不可欠です。
EC事業における事業計画で必要な項目
自社ECサイトの立ち上げや、楽天市場・AmazonなどのECモールへの出店を検討する際にも、事業計画書の作成は不可欠です。
計画書に盛り込むべき主な内容は、以下の通りです。
- ECを展開する目的(販路拡大、ブランディング、顧客接点の強化など)
- 具体的な事業内容(商品ラインナップ、販売形態など)
- 収支見通し(初期投資、運用コスト、売上予測など)
- 販売戦略(集客方法、プロモーション施策、価格設定など)
- 運営体制(担当者の役割、外部委託の有無など)
- スケジュール(立ち上げから運営までの工程)
こうした計画が明確でなければ、ECサイト運営の方向性がぶれやすくなり、結果として目標達成が困難になる可能性があります。限られたリソースで着実に成果を上げるためにも、事前にしっかりとした計画書を作成しておくことが成功の鍵となります。
EC事業における事業計画を策定する流れ
ECサイトを円滑に立ち上げ、持続的に成長させるためには、事前の計画づくりが欠かせません。しっかりとした事業計画を策定することで、やるべきことが明確になり、施策の一貫性も保たれます。
以下は、EC事業における計画策定の基本的なプロセスです。
- 現状の把握と課題の整理
- フレームワークを活用した目標の明確化
- EC戦略の立案
- 外部パートナーの選定
- 事業計画書の作成
- 計画に基づいた運用の開始
現状の把握と課題の整理
EC事業を立ち上げる際にまず取り組むべきステップの一つが、「現状分析」です。
- 日次分析
日別の売上、各指標を定点観測することにより、指標の改善点の洗い出し。競合比較による差分確認 - アクセス分析
性別や年代別等のアクセスを分析することにより、ターゲット層にアプローチできているか検証 - ジャンル別分析
ジャンルの売上推移を分析することにより、注力ジャンル等の選定 - 商品分析
商品別の売上、各指標、新規既存人数を確認することで、より詳細に売上構成を把握が可能 - キーワード分析
店舗、商品別で検索流入キーワードを確認することで、どのキーワードに注力してSEO対策を行うか検証可能 - 新規既存顧客分析
店舗全体の新規既存顧客推移、購入回数別顧客人数を確認することで店舗の顧客状況の検証可能 - 販促分析
RPP、クーポンアドバンスの運用型広告の効果検証を行うことにより、広告効果最大化が可能 - クーポン/メルマガ分析
各月別でクーポンとメルマガの販促効果を出すことにより、適切な内容、時期で販促ができているか検討
自社の強みやリソース、現在抱えている課題を丁寧に棚卸しすることで、どの方向に進むべきかが見えてきます。
特に重要なのが、自社の立ち位置を客観的に把握すること。誰をターゲットにするのか、自社は市場の中でどのポジションにあるのか、そして競合はどのような戦略を取っているのかといった点を明確にすることで、今後の目標や戦略がより現実的かつ実行可能なものになります。
このような分析を行う際に役立つのが「3C分析」というフレームワークです。
3Cとは以下の3つを指します。
- Customer(市場・顧客):どのようなニーズが存在し、どの層がターゲットとなるか
- Company(自社):自社の強み・弱み、商品やサービスの特徴
- Competitor(競合):競合の戦略、シェア、強み・弱みなど
この3つの視点から市場環境を俯瞰的に分析することで、どこにチャンスがあるのか、どのようなリスクに備えるべきかがクリアになります。これを踏まえて戦略を立案すれば、ブレのないEC運営が実現できるでしょう。
分析については、下記記事で説明しているので合わせて読んでみてください。
フレームワークを活用した目標の明確化
現状分析を終えたら、次のステップは明確な目標の設定です。目標を定めることにより、達成までに必要な課題や施策がより明確になり、組織としての方向性が統一されます。
この目標設定において有効なのが、「SMARTの法則」です。これは、目標を具体的かつ達成可能な形で構築するためのフレームワークで、次の5つの要素から構成されています:
- Specific(明確で具体的であること)
- Measurable(数値などで測定可能であること)
- Achievable(現実的に達成可能であること)
- Relevant(事業や戦略との関連性があること)
- Time-bound(期限が設定されていること)
この法則に従って目標を組み立てることで、漠然とした理想ではなく、実行可能な行動計画に落とし込むことが可能になります。
さらに効果的なのは、KPIツリー(指標ツリー)を併用することです。KPIツリーとは、最終的な目標(ゴール)から逆算し、それを達成するために必要な中間指標やアクションを因果関係で整理する手法です。これにより、チーム全体で共通の指標に基づいた進捗管理が可能になります。
現実的な目標と、そこに至るまでの具体的なアクションを可視化することで、EC事業の推進力をより高めることができるでしょう。
EC戦略の立案
目標が定まったら、次に取り組むべきは具体的な戦略の構築です。単に販売チャネルを決めるだけではなく、「どのように売るか」「どの顧客層を狙うか」「どのような体制で運用するか」といった要素を総合的に検討する必要があります。
戦略設計を行う際に有効なのが、ペルソナ設定とカスタマージャーニーマップの作成です。
- ペルソナ:自社の理想的な顧客像を詳細に描くことで、誰に向けた施策なのかを明確にします。
- カスタマージャーニーマップ:見込み顧客が自社を知り、検討し、購入に至るまでの行動・心理の変化を時系列で可視化するツールです。
こうした分析により、ユーザー体験を意識した戦略を立てることができ、より高い成果が見込めます。このときはマーケティングの基本フレームである「4P」の視点から整理してみることが非常に有効です。
4Pとは、以下の4つの要素で構成されます。
- Product(商品)
- Price(価格)
- Place(販路)
- Promotion(販売促進)
Product(商品)
販売予定の商品が決まっていない場合は、競合他社の動きや市場の傾向を踏まえて、取り扱う商品を検討する必要があります。ただし、多くのケースではすでに販売予定の商品がある程度決まっていることが一般的ですので、本稿ではその前提で話を進めていきます。
ここでは、商品を「入口商品」と「テール商品」に分けて考える方法をご紹介します。
「入口商品」とは、その名のとおり、お客様が最初に店舗に訪れるきっかけとなる商品です。
特にECモールでは、検索結果で上位表示されることが非常に重要であり、そのためにはまず一定の販売実績を積み、店舗への流入を促す“看板商品”をしっかりと選定する必要があります。
ただし、入口商品だけで利益を出すのは難しい場合も多いため、次に購入してもらいたい「テール商品」へスムーズに誘導できるよう、商品ページの構成や導線設計も同時に考慮することが大切です。
さらに、商品ごとの訴求ポイントを明確にしておくことも忘れてはなりません。
訴求ポイントが曖昧なままでは、商品ページの構築時に特徴が伝わらず、印象に残らないページになってしまう可能性があります。商品の役割と魅力をしっかりと整理した上で、販売戦略を立てていきましょう。
Price(価格)
どの商品を注力して販売していくかを決定した後は、次に商品ごとの価格設定を検討していきましょう。
PB(プライベートブランド)商品とNB(ナショナルブランド)商品では、価格の考え方に違いがありますが、いずれの場合もまずは市場価格の調査がスタート地点となります。
具体的には、自社が販売する商品と類似した商品を競合からピックアップし、リスト化した上で、自社商品の価格がどの水準まで下げられるかを検討します。
そのうえで、価格面での競争優位性を確保できるかどうかを、商品ごとに丁寧に見極めていくことが重要です。価格設定は単なる数字の問題ではなく、ブランドイメージや利益率にも直結する要素であるため、慎重に判断しましょう。
Place(販路)
商品戦略や価格戦略の検討とあわせて、どのモール・どの販売チャネルに注力するかという方針も並行して決めていく必要があります。
たとえば、
- 「楽天市場は一番市場規模が大きそうだから、とりあえず出店してみよう」
- 「ヤフーショッピングは固定費が安く済むから、まずはそこから始めよう」
といった感覚的な判断で出店先を決めてしまうケースも少なくありません。
しかし、本来であれば、自社の商品やビジネスモデルに最も適したモールはどこなのか、
また、販路拡大の優先順位をどのように設定するかについて、初期段階でしっかりと検討しておくべきです。
ECモールごとにユーザー層や競合環境、出店コスト、販促手法などが異なるため、これらを比較・分析した上で、自社にとって最適なチャネル選定を行うことが、成果を高めるカギとなります。
Promotion(販売促進)
言うまでもなく、ECにおいてはプロモーション活動が非常に重要な要素となります。
実店舗と異なり、ECの世界では数え切れないほどのショップがひしめき合っているため、
よほどのブランド力や突出した商品力がない限り、ただ出店しただけでは自然に集客できることはほとんどありません。
そのため、自ら積極的に認知を広げるための仕掛け=販促施策が不可欠です。
この前提を踏まえたうえで、モールごと、商品ごとに最適なプロモーション手法は何かを見極め、戦略的に施策を展開していくことが重要です。
たとえば:
- 楽天市場でのクーポン配布やスーパーセールへの参加
- Yahoo!ショッピングでのポイント還元キャンペーン
- 自社ECサイトでのSNS広告やリターゲティング広告の活用
など、販売チャネルの特性を理解した上で販促プランを組み立てることで、より高い効果が期待できます。感覚ではなく、データや特性に基づいたプロモーション戦略の設計を心がけましょう。
外部パートナーの選定
戦略の方向性が固まったら、次は実行フェーズに向けて外部パートナーの選定に進みましょう。ECサイトの制作や広告運用を外部に委託する場合、その選択が売上に直結することも少なくありません。したがって、価格だけにとらわれず、総合的な観点から信頼できる企業を選ぶことが重要です。
選定時には、以下のようなポイントを重視しましょう:
- 過去の実績と専門分野:EC領域での支援経験が豊富か、自社の業界に精通しているかを確認します。
- 対応範囲の明確さ:戦略立案、広告運用、サイト制作、アフターサポートなど、依頼したい業務にどこまで対応できるかを整理しましょう。
- サポート体制の充実度:問い合わせ対応の早さ、定期的なレポート提出の有無、改善提案の積極性など、長期的なパートナーとして信頼できる体制が整っているかも重要です。
広告代理店や制作会社は、「安いから選ぶ」という基準ではなく、「成果に結びつけられるかどうか」「運用負担をどれだけ軽減できるか」といった視点で選ぶことが、後々のトラブル回避や費用対効果の最大化に繋がります。
事業計画書の作成
これまでに整理してきた現状の分析結果、目標設定、具体的な戦略などをもとに、いよいよ事業計画書をまとめていきましょう。
計画書を作成する際に意識すべきポイントは、「誰が読んでも理解しやすい構成」であることです。なぜなら、事業計画書は社内だけでなく、金融機関への融資申請や外部の取引先との連携など、社外に提出する機会も多いためです。
そのため、専門用語ばかりに頼らず、事業の全体像が一目で分かるよう、簡潔かつ論理的に整理することが求められます。
また、目標や戦略といった前向きな要素だけでなく、以下のようなリスクとその対策についても記載することで、信頼性の高い計画書になります:
- 商品供給に関するリスク(在庫切れ、仕入先の不安定性など)
- 集客が想定通りに進まない場合の対応策
- 人員不足や運用負担が増えた際の体制見直しの可能性
このように、ポジティブな見通しとともに、万が一のシナリオも見据えた現実的な計画書を作成することで、説得力のある資料となり、ステークホルダーからの信頼も高まります。
計画に基づいた運用の開始
事業計画書の作成が完了したら、いよいよ実行フェーズに移ります。ただし、EC市場は常に変化するダイナミックな世界。計画した通りに全てが順調に進むとは限りません。
運用中に想定外の課題に直面したり、成果が思うように出なかったりすることも十分にあり得ます。そんな時こそ重要なのが、「柔軟に対応できる姿勢」と「計画の見直し力」です。
施策がうまく機能していないと感じた場合には、その原因を冷静に分析し、必要に応じて戦略や施策を再構築することが、継続的な成長のカギとなります。
また、ECサイト立ち上げ時には、以下のような実務的なポイントを意識することで、よりスムーズな運営と成果の最大化が期待できます:
- 固定費の最小化:初期段階では過剰な設備投資を避け、無理のない運営体制を整える
- 在庫管理の最適化:過剰在庫による資金圧迫を避け、回転率を意識した仕入れを行う
- リピーター施策に注力:新規顧客獲得だけでなく、既存顧客との関係を深めることで、安定的な売上を目指す
- 商品ページの情報強化:購入を後押しする丁寧で魅力的な商品説明は、CVR(購入率)に大きく影響します
- キャンセル・返品ポリシーの明示:トラブル回避のためにも、条件や対応方法は分かりやすく掲載
- 創業者の想いや背景の共有:共感を呼ぶストーリーは、ブランドの信頼性を高め、ファンの獲得にもつながります
このような視点を持ちつつ、状況に応じて柔軟に戦略を調整していくことで、変化の激しいEC市場においても持続的な成長が可能になります。
EC事業における事業計画の運用方法
これまでの流れで事業計画をしっかりと立てた後は、その計画をどのように運用していくかが次の重要なポイントとなります。
どれだけ緻密に計画を立てたとしても、実際の運用では予想と異なる結果が出ることが少なくありません。そのため、計画通りに進んでいるかどうかを定期的に確認し、必要に応じて柔軟に対応する姿勢が求められます。
具体的には、月次あるいは週次のタイミングで、実施した施策と計画とのズレを検証し、
- どこにギャップが生じているのか
- その要因は何か
- 次回以降どう軌道修正を図るべきか
といった点を社内で共有・議論する機会を設けるようにしましょう。
こうした定期的な振り返りと改善のプロセス(PDCA)を継続的に実施することで、計画を「机上の空論」で終わらせることなく、実際の成果へとつなげていくことができます。
まとめ
今回は、EC事業を立ち上げるうえで欠かせない事業計画の重要性や、具体的にどのような分析を行うべきかについて解説してまいりました。
事業の成功には、計画段階から戦略的に準備を進め、運用フェーズでも柔軟に改善を重ねていく姿勢が欠かせません。
なお、弊社では楽天市場をはじめとする各種ECモールや自社ECサイトの運営・運用代行サービスを提供しております。「自社だけでは手が回らない」「戦略設計から支援してほしい」といったお悩みをお持ちの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

株式会社Proteinum 代表取締役
プロテーナムでは、楽天、amazon、自社EC、Yahoo!ショッピングを中心に、データに基づく圧倒的な成果にこだわった支援を行っている。ナショナルブランドを中心に累計1,000社以上の支援と年間広告費10億円以上の運用実績を持ち、独自のEC運用支援システム「ECPRO」も提供している。
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