【2025年のEC戦略】クラウドファンディングは「売る場所」から「ファンを創る場所」へ

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新商品を開発したいけれど、在庫リスクや初期投資の大きさがネックになって、なかなか一歩を踏み出せない。そんなEC事業者の方へ、クラウドファンディングという選択肢をご紹介します。

この記事は、これまでの支援実績が1,000社以上、広告運用実績年間10億円以上の弊社(Proteinum)が解説します。

Writer米沢 洋平

株式会社Proteinum 代表取締役

慶応義塾大学を卒業後、楽天グループ株式会社に入社。ECコンサルタントとして、ショップオブザイヤー受賞店舗を含むのべ700店舗以上を支援。その後、小売業を中心に経営コンサルティング業務に従事(事業戦略策定、EC戦略策定・実行支援など)し、株式会社Proteinum(プロテーナム)を創業。
プロテーナムでは、楽天、amazon、自社EC、Yahoo!ショッピングを中心に、データに基づく圧倒的な成果にこだわった支援を行っている。ナショナルブランドを中心に累計1,000社以上の支援と年間広告費10億円以上の運用実績を持ち、独自のEC運用支援システム「ECPRO」も提供している。

クラウドファンディングとは

クラウドファンディングは、その名の通り「群衆(Crowd)」から「資金調達(Funding)」を行う仕組みです。 ネットを通じて世界中の人々から少額ずつサポートを募るこの手法は、単なる資金集めではありません。「手軽さ」「SNSでの拡散力」「テストマーケティングとしての価値」を兼ね備えた、次世代のビジネス戦略として急速に普及しています。

購入型クラウドファンディング

クラウドファンディングにはいくつかの形式がありますが、EC事業者がまず押さえておくべきは「購入型クラウドファンディング」です。 これは、プロジェクトに支援した見返り(リターン)として、完成した商品やサービスを受け取る仕組み。実態は「発売前の先行予約販売」に非常に近く、ネットショップでのお買い物と同じ感覚でユーザーに利用してもらえるのが特徴です。

購入型クラウドファンディングの実施方式

購入型クラウドファンディングには、目標達成の可否によって資金の受け取り方が変わる2つの方式があります。

All-or-Nothing(達成後支援型)

「目標金額に1円でも届かなければ、プロジェクトは不成立」という背水の陣で挑む方式です。支援金は全額返金され、リターンの送付義務もなくなります。「一定の注文数が確保できないと赤字になる」という新商品開発など、リスクを最小限に抑えたい場合に最適です。

All-In(実行確約型)

「目標金額に達しなくても、集まった分だけ資金を受け取れる」方式です。ただし、たとえ支援者が1人だけでも、約束したリターンを届ける義務が発生します。すでに商品の在庫がある、あるいは自己資金での製造が確定しており、主に「予約販売」や「プロモーション」として活用したい場合に選ばれます。

ECにおけるクラウドファンディングの活用メリット

なぜ今、売れているショップはクラウドファンディングを使うのか? EC展開における5つの決定的なメリットを解説します。 これを知ることで、あなたの新商品開発の常識がガラリと変わるかもしれません。

テストマーケティング

クラウドファンディングの大きな利点は、支援者の年齢・性別・居住地といった属性データを詳細に分析できることです(例:Makuakeの管理画面など)。これにより、「実は30代女性よりも40代男性に響いていた」といった、一般販売前に貴重なニーズの裏付けを得ることができます。

ただし、ここで得たデータを「市場の縮図」だと過信するのは禁物です。クラウドファンディングの支援者は、新しい物への感度が高い「イノベーター層」が多く、一般消費者とは購買行動が異なる傾向にあります。ここでの成功をそのまま一般販売の予測にスライドさせるのではなく、あくまで一つの指標として慎重に捉えましょう。

PR・初期顧客の獲得

クラウドファンディングを実施すること自体が、強力な「事前PR」になります。プラットフォーム自体が非常に高い検索エンジン評価(SEO)を持っているため、自社サイト単体でプロモーションを行うよりも、圧倒的に多くのユーザーの目に触れる機会が増えるからです。

また、クラウドファンディングはニュースメディアやSNSの関心も高く、第3者の媒体に「話題の新商品」として取り上げられる可能性も秘めています。単なる販売の場ではなく、ブランドの認知度を一気に引き上げる「広告塔」としての役割を果たしてくれるのです。

実績づくり

本来、知名度ゼロの商品を世に広めるには、膨大な広告費と地道な営業活動が欠かせません。しかし、クラウドファンディングで事前に認知を獲得し、成功実績を作っておけば、その苦労の多くを飛び越えることができます。 「すでに人気がある商品」としてEC販売を開始できるため、初期の集客コストを大幅に抑えながら、初速から高い売上を狙うことが可能になります。

在庫リスク軽減

クラウドファンディングは実質的な先行予約販売であるため、実施期間中に集まった支援数から、その後のEC展開に必要な在庫数を正確に割り出すことができます。 特に高額な商品や、色のバリエーションが多い商品の場合、事前に人気度を判定できるメリットは計り知れません。確かな判断基準を持って仕入れや生産を行えるため、キャッシュフローを健全に保ちながらスムーズな一般販売へと移行できます。

必要なお金を集める

クラウドファンディングを活用すれば、プロジェクトの目的に合わせて必要な費用を事前に募ることができます。 購入応援型の特徴は、集まった資金を「使った経費の穴埋め」や、あるいは「それ以上の利益獲得」に充てられる点にあります。自社で全額負担して商品を準備する従来の方法とは異なり、市場の応援(購入)によって資金を確保してから本格的な活動ができるため、資金繰りのプレッシャーを大幅に軽減できるのが魅力です。

クラウドファンディング実施の流れ

プロジェクトは、プラットフォームへの申請からスタートします。成功のカギは、公開前の「仕込み」と公開後の「盛り上げ」の両立にあります。

  1. 企画・戦略立案:プロジェクトの目的とリターン(商品)の設計
  2. プラットフォーム相談:担当者との面談・ブラッシュアップ
  3. ページ制作:商品の魅力を最大化するストーリーと画像の作成
  4. 審査・承認:ガイドラインに沿った内容確認
  5. 事前告知(ティザー):公開直後にロケットスタートを切るための集客
  6. プロジェクト公開:いよいよ募集開始
  7. 活動報告・追客:掲載中のアップデートによる支援の加速
  8. 資金の受け取り:目標達成後の精算
  9. リターン配送・EC誘導:支援者への感謝とともに、自社ECへの継続利用を促す

クラウドファンディング成功のためのポイント

プロジェクト集客用ページ作成(クラウドファンディング実施サイト内)

クラウドファンディングにおいて、集客ページの質が結果のすべてを左右すると言っても過言ではありません。実際に成功を収めているプロジェクトに共通しているのは、例外なく、商品の魅力が直感的に伝わる「洗練されたページ」を作り込んでいるという点です。

ここは、ECサイトの看板商品ページを制作する以上の熱量が必要です。もし自社での制作に少しでも不安があるなら、迷わずプロの外注業者を活用することを推奨します。ページ制作への投資は、プロジェクト成功後の「実績」というリターンで十分に回収できるからです。

ページの作成ができる業者の選び方については、下記記事で詳しく解説しているので読んでみてください。

プロジェクトの告知活動

クラウドファンディングは、ページを公開しただけで自動的に支援が集まるほど甘い世界ではありません。プロジェクトを成功させるには、戦略的な情報発信が不可欠です。 SNSや自社サイトでの告知はもちろん、PR TIMESなどのプレスリリース配信、さらにはターゲットを絞ったWeb広告の運用など、あらゆる手段を講じて「話題」を自ら作り出す必要があります。初動でいかに多くの注目を集められるか、その執念が最終的な支援額に直結します。

購入型クラウドファンディングサイトおすすめ3選

近年、クラウドファンディングサイトは数多く誕生していますが、サイトごとに「集まっているユーザーの属性」や「得意なジャンル」が大きく異なります。自社商品の魅力を最も引き出せるプラットフォームを選ぶことが、成功への第一歩です。

クラウドファンディング主要3サイト比較表

項目CAMPFIRE (キャンプファイヤー)Makuake (マクアケ)Readyfor (レディーフォー)
得意ジャンルオールジャンル、個人、地域ガジェット、新製品、D2C社会貢献、伝統工芸、医療
手数料(税込)18.7%22%13.2%〜18.7%
審査期間最短即日〜5日約1〜2週間約2週間〜
入金タイミング終了月の翌月末終了月の翌月25日終了月の翌々月10日
早期振込制度あり(最短4営業日)なしなし
主なユーザー層20-40代の幅広い層トレンドに敏感な30-50代40-60代の共感重視層
こんな方向け最速で公開し、幅広く拡散したい高単価・高機能な新製品をブランド化したい社会的意義やストーリーを伝えたい

CAMPFIRE(キャンプファイヤー)

「圧倒的な集客数とスピード感。幅広い層へリーチしたいならここ」

  • 特徴: 累計支援者数は延べ1,300万人、会員数は510万人を突破(2025年3月時点)。日本最大級のプラットフォームであり、プロダクトから地域活性、エンタメまで全方位に強いのが魅力です。
  • 新規案件数: 国内トップクラス。常に膨大な新着プロジェクトが動いています。
  • 審査: 最短1日〜。AI活用などで以前よりさらに迅速化しています。
  • 入金: 原則として翌月末払いですが、「早期振込サービス(最短4営業日)」も充実しており、キャッシュフローの調整がしやすいです。
  • 手数料: 17%(税別)。※決済手数料5%を含む税込表記では18.7%。特定ジャンルの優待やサブスク型割引プランも登場しています。

Makuake(マクアケ)

「モノづくり・ガジェット・D2Cの聖地。高単価・高成約を狙うならここ」

  • 特徴: 応援購入という独自の文化が定着。2025年10月時点の市場調査では、金額・件数ともにシェア約6割で首位を独走しています。特に「新製品」への感度が高いサポーターが集まっており、ガジェット、家電、ファッション等の成功率が極めて高いのが特徴です。
  • 新規案件数: 非常に多く、1日あたり数十件の新プロジェクトが公開されます。
  • 審査: 約1〜2週間。景品表示法などのコンプライアンスチェックは他社より厳格ですが、その分掲載の「お墨付き」効果が高いです。
  • 入金: 終了月の翌月25日(2024年に短縮改訂)。以前より1週間程度早まりました。
  • 手数料: 20%(税別)。※税込表記では22%。他社より高いですが、提携メディア(日経新聞等)への露出支援が手厚いです。

マクアケについては以下の記事でも解説していますので御覧ください。

Readyfor(レディーフォー)

「共感と信頼のプラットフォーム。社会貢献やストーリー重視の商材ならここ」

  • 特徴: 累計支援額は500億円を突破(2025年9月)。「寄付型」のイメージが強いですが、「購入型」でも伝統工芸品やサステナブルな新素材など、社会的意義の強いプロダクトに強い関心を持つ支援者が多いです。
  • 新規案件数: 安定しており、一つひとつのプロジェクトを深掘りする文化があります。
  • 審査: 最短2週間〜。専門のキュレーター(担当者)が伴走するプランが充実しています。
  • 入金: 翌々月10日など、標準プランではやや長めですが、プランにより調整可能な場合もあります。
  • 手数料: 12%〜(税別)。※シンプルプランの場合。フルサポートプランは17%〜。主要サイトの中では最もコストを抑えやすいのが強みです。

まとめ

今やクラウドファンディングは、単なる資金調達の場ではなく、ECビジネスを成功へと導く「強力なマーケティングツール」へと進化しました。この「クラウドファンディングコマース」の波に乗ることで、あなたのアイディアはより低リスクで、かつダイレクトに顧客の元へと届くようになります。

多様なプラットフォームの中から、自社のビジョンに寄り添ってくれる最適な場所を見つけ出し、次世代の物販事業へ挑戦しましょう。その一歩が、ブランドの未来を大きく変えるきっかけになるはずです。

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